第29回 日本心療内科学会学術総会 2日目
第29回 日本心療内科学会学術総会の2日目です。

東京国際クルーズターミナル駅ではサイクリングイベントが開催されておりました。
そんなアクティブなイベントを横目にじっと座って過ごす学会へ向かいました。
今回の目的は、
①心身症への理解(呼吸、消化器、疼痛)
②心療内科×漢方
でしたので、それにあわせて2日目の予定も立てておきました。

2日目は産業医の単位取得も必要でしたし、ちょうど漢方をテーマにしておりましたので追加で料金を払ってでも受講しようと思い参加しました。
変更点はランチョンセミナーです。
予定を立てた時点ではランチョンセミナーの内容が公開されておりませんでしたが、当日には会場に張り出されておりランチョンセミナー4へ予定変更しました。
【学び】
2日目で学びがあったのは
①漢方
そもそも漢方の扱いも学びに行っているのでとうぜんではありますが、
舌診で舌浮腫により歯形が残る人は水毒があるので、利水役である五苓散をよく使うという所見は以前に学び活用しておりました。
しかし、今回は『舌がぴくぴくする』という所見は筋緊張を指し肝気の高ぶり、と表現できることが大いに学びになりました。
つまり、抑肝散の出番です。
また、抑肝散はやせ型のイライラタイプとの相性も良いので、追加で所見を見て判断でよさそうです。これに、胃腸障害が伴えば、抑肝散加陳皮半夏の方が良いようです。
②IBS
IBSの話は正直言って奥が深くて理解できた気はしませんでした。
ストレス嘔吐自体が、ACTH過剰分泌に伴い正常者とは全く異なるものになっていることが一因という点には驚きました。
ACTH過剰分泌があれば、普通はコルチゾールが増加し、抗ストレスホルモン作用が発揮されそうなもので、そこがアンバランスで難しいと感じました。
また、視床下部障害による下垂体機能障害でも、ACTH過剰分泌が生じますのでこの辺は鑑別に要注意だと感じました。
総合診療医がつくられた時に、内科とも救急医とも違う総合診療医のアイデンティに悩む医師が多かった気がしますし、理解されない部分も多かった気がします。
いまだに理解していない病院では、総合診療医がやりがいを失い離れていく傾向にはあるためまだまだ難しい部分ではあります。
同様に、心療内科医も精神科でもいわゆる一般内科でもない自分たちのアイデンティティに悩んでいることを知りました。
発言はしませんでしたが、おそらく総合診療との親和性と共感性が高いということを念頭に、プライマリケア学会と合同企画とかをやると非常に活発な議論ができそうな気がします。
【ランチョンご飯】
ランチョンセミナーのご飯は今半のすき焼き弁当でした。
2日目のリッチなご飯でありがたく頂きました。


【おやつ・ドリンク】
2日目は前日の疲れからか少し眠気もあり、コーヒーばかり頂きました。
2日目はコーヒーブレイクセミナーは参加せず。


【帰路・周辺】
帰路は、東京テレポート駅→(りんかい線)→天王洲アイル駅→(東京モノレール)→羽田空港の経路で帰りました。
時間的にも夕暮れがきれいなお台場でした。


なお、12月という時期なだけあり、イルミネーション?と思しきデコレーションをされた公園を横切りましたが、おしゃれすぎてすぐ帰りたくなりました。


【まとめ】
東京まで行くのに非常に疲れましたが、行った甲斐のある学びのある学会でした。
特に、非オンライン・オンデマンドの部分が少なくないため、現地でしか学べない部分も多く、現地に行って参加する意義を改めて感じる学会でした。
個人的にはこういう現地に行く価値が高い学会の方が好きです。
第29回 日本心療内科学会学術総会 1日目
第29回 日本心療内科学会学術総会が日で開催されました。

開催場所はお台場付近で、プライベートでは滅多に行かないような場所で開催されました。
東京国際クルーズターミナル駅から徒歩圏内でした。

今回は自分の発表はなく、基本的には講座を聴きに行くのがメインでした。
今回の目的は、
①心身症への理解(呼吸、消化器、疼痛)
②心療内科×漢方
の情報を得るのが最大目的でしたので、スケジュールもそれに合わせて組みました。
本来学会だと、知り合いに会うことも多く自分が立てた予定通りに行かないのが常ですが、こちらの学会は全く知り合いもいないため、事務局の方やツムラの方としか会話をしていないな、と改めて思いました。
初日は心身症ガイドライン、TIPS、ランチョン(睡眠障害)、不登校児への漢方治療、についてを聴講しました。

【学び】
初日で学びがあったのは
『子供は言語化して表現できない』のが前提であり、性格や体格、行動から選択をしていくポイントをある種極論的に明日から使えるぐらいのシンプルさでまとめてあり非常に勉強になりました。
小建中湯は予期不安に使えて、半夏厚朴湯は対人関係でも他人が原因となるような不登校で使い勝手が良いなど初めて知る情報も多く、非常に学びが多かったです。
あっという間の50分でした。
ランチョンセミナーでしたので、前半はご飯を食べていましたが、後半からはメモする手も進む面白いお話でした。
肌感覚にあるうつ病と不眠症に関する関連から、睡眠障害に関しての全般論まで多岐に渡りました。
普段の診療とはかけ離れてはいないが、その背景エビデンスなども知ることで、安心して診療に当たれる背中を押してもらったような内容でした。
また、睡眠障害管理がうつ病患者の再燃予防になる事から、やはり積極的な介入の価値がある事も再認識しました。
不眠症の認知行動療法アプリ→保険収載予定という話はもう少し掘り下げて聴きたい気はしました。
③TIPsの慢性疼痛のバランスへの視点
愛着パターン、活動量、欲求不満場面の3つを対極構造を提示してから極論的にパターン化し、
そこから中庸へという表現は非常に分かりやすい提示の仕方で理解がしやすいと感じました。
【ランチョンご飯】
ランチョンセミナーのご飯はなだ万のお弁当でした。
こんなリッチなご飯は中々味わえないのでありがたく頂きました。


【おやつ・ドリンク】
ドリンクコーナーがあり、コーヒーやクッキーが配られていました。
初日は少し寒かったのでホットコーヒーを頂きました。

また、コーヒーブレイクセミナーでもお菓子とドリンクを頂きいいおやつが手に入りました。


認知症サポート医養成研修 受講しました
2025年度の認知症サポート医養成研修を受講しました。

地域における、認知症患者さんのサポート窓口としての存在になります。
必要ならば、直接訪問介入をしたり、かかりつけ医と連携したり、更なる専門的機関へ繋ぐ役割も担います。
【役割に関して】
色々ありすぎて難しいですが、
①認知症初期集中支援チーム
②連携業務
③知識の普及啓発活動
この3つが主なものだと思います。

①認知症初期集中支援チームへの関与
本人家族、地域住民、民生員、ケアマネジャー、など医療者だけでなく、福祉や全く関係のない方から、『認知症によって生じている問題への初期介入』がチームの役割になります。
依頼があれば、チームへの医師としての介入、具体的には後述する連携に関わる業務や必要時にアウトリーチも行います。
個人的にはこのアウトリーチに対して興味があるため、支援チームがもし依頼をしてくださるなら是非参加したいです。

②連携業務
かかりつけ医との連携、認知症疾患医療センターとの連携の2つになります。
かかりつけ医からの認知症ケアに対する相談窓口として、治療に限らず、地域のリソースへの案内を行うことが求められます。
一方で、診断を確実に確定させたり、適切な治療を必ずしないといけない訳ではなく、必要に応じてより高度な機関へ橋渡しをする役割も担います。

③知識の普及啓発活動
地域において認知症の市民講座を行ったり、啓発活動のための資料作成をしたりします。
僕はあんまり大人数の前で話すのは得意ではないので、資料作成ぐらいが自分には合います。
年4コマぐらい学校の授業とかしているくせにこんな事いいっていていいのでしょうか。
【加算に関して】
認知症サポート医の診療とそれに関わる加算があります。
認知症サポート指導料といい
①外来患者さんにおいて
②1年以上の経験があれば
認知症サポート医の診療に対して、半年に1回の450点算定ができます。
この診療は基本的にはかかりつけ医の求めに応じた対応とされてはいます。
また、かかりつけ医へこの『指導』を行い助言をした際には、かかりつけ医も半年間は月1回300点が算定できます。
それが認知症療養指導料2となります。


紹介する方も、される方も算定ができるので、各都道府県の認知症サポート医の名簿も公開されます。
【認知症を取り巻く環境】
ただ、連携をする窓口としての立ち位置をやり続けるためには、全体像が把握できていることも大事です。
正直、あまり得意ではない分野です。
おそらく医師の多くが得意ではないですが、認知症カフェあたりから少しずつ自分の幅を広げてみたいなと感じさせられました。

【診断・治療】
医者としてはこの部分に時間と思いが割きたくなりますがサポート医の本来の立場からすると、『知っている程度』でいいなと思います。
診断というか、所見の評価仕方がわかるのは価値が高いなとは思いました。
個人的には、後ろ向きではない、前向きな考え方が非常に学びが大きかったですし、グループワークも非常に良かったです。
ただ、グループワークの時間はもう少し長かった方がいろいろ話を聞くチャンスになったかとは思い残念ではありました。
もし、興味がある方はぜひ受講も検討してみてください。
論文読解:医者もゴリラを見落とす
まあまあ、パンチのきいたタイトルかもしれないですが。
【きっかけ】
診断エラーを考える際に、『見落とす』というものが少なからずありますが、視界に入っているはずなのに見えていない、ものがあります。
そういうものの中でも有名なものに、非注意性盲目という認知バイアスがあります。
これを示した有名な実験に、見えないゴリラ、というものがありますが、これまた字ずらだけで見たら意味が分かりません。
これを、医療者にやった論文が2013年にありますので読んでみました。
医者もゴリラを見落とすようです。
【今回の論文】
“The invisible gorilla strikes again: Sustained inattentional blindness in expert observers”
です。
日本語に直訳すると、『見えないゴリラ再び襲来:専門家観察者における持続的な無関心盲点』です。
PubMedのページはこちら👇
・熟練した専門家においても「持続的不注意による盲目(Sustained Inattentional Blindness)」が生じるかを検証した実験研究(横断研究)
・24人の放射線科医に肺癌のスクリーニングを目的とした肺のCT画像を確認させ、肺結節を探索するよう指示した。
・その際、最後の症例のCT画像の中に、小さなゴリラの画像を複数枚にわたり挿入した。その結果、放射線科医の83%が、この予期せぬゴリラの画像に気づかなかった。
・専門家であっても、特定のタスクに集中していると、予期せぬ異常を見逃す可能性が高いことを実証した研究である。
【PICO】
・P:24人のボストン在住の放射線科医(平均経験年数は12.9年)
・I:5症例の肺CTスクリーニング画像で肺結節を探すタスクを課す
最後の症例のCT画像に連続する5枚のスライスにゴリラの画像を入れる
・C:明確なものはない
・O:Primary 予期せぬゴリラに気づいた放射線科医師の割合
Secondary ゴリラを注視した時間、肺癌の正診率
【方法】
経験豊富な24人の放射線科医師により、肺癌スクリーニング画像(平均10.4個の肺結節)を5症例読影し、その中の最後の症例に5枚のスライスにわたってゴリラの画像が挿入され、異常に気付くかを判定した。
【結果】
・24人中20人(83%)がゴリラの存在に気付かなかった。
・ゴリラを見落とした20人中12人はゴリラが表示されていた領域の視線を向けていた。
・肺結節の検出精度はゴリラを見つけた群も、見つけられなかった群も優位差はなかった(平均正診率 56% vs 57%)。
【まとめ】
・本研究は、高度な訓練を受けた専門家でさえ、特定のタスクに集中している際には、たとえ視界の中心にあったとしても、予期せぬ物体を完全に見逃してしまう「非注意性盲目」に陥ることを明確に示した点で画期的である。
・この結果は、放射線科医の能力を疑問視するものでは全くなく、むしろ人間の認知システムの普遍的な特性を浮き彫りにしたものである。
【個人的な感想】
83%の放射線科医が見落とすなら、正直分かりにくいゴリラなのではないかと思い論文を見ると、結構わかりやすいゴリラでした。
どうでしょうか?
結構わかりやすいゴリラではないでしょうか?

別の画像ではこちら

これも、普通なら見落とさない気がします。
それでも、集中するべきタスクがあると、熟練した人でさえも見落とすわけです。
診断エラーが起きやすく、防ぐことの難しさを改めて感じさせられました。
COVID-19ワクチンに対する個人的な思い
色々とCOVID-19ワクチンに関して、個人的な考えを聞かれるので、以下にまとめてみました。
度々、話をしていますが、ワクチンが意義があったか、副反応で打った方が良くなかった、とかいう議論は大事であるが、常に論点が噛み合っていないように見えます。
個人的な立ち位置は、ワクチンの意義は全くなかったとは思っていない、けれど副反応も無視できないレベルではありそう、という感じです。
ワクチンの意義としては、
デルタ株までなら喫煙者や糖尿病患者を主体にはそれなりに死亡率も重症化予防にも寄与していたと思います。ある程度は感染予防もあった時期もあったと思います。
しかし、オミクロン株以降は残念ながらあまり意義はなく、重症化予防ぐらいは少しありそうですが。感染予防も死亡率にもあまり寄与はしない気はします。特に、最近のCOVID-19はそれ自体で亡くなること少なく、COVID-19をきっかけに食事が摂れないとか、廃用が進むとかで結局回復しないとかが予後に影響していると思っています。
なので、『かつて』は意義があったと思いますが、今は微妙と考えています。よって5年という期間で切り取れば、意義は全くなかった訳ではないという思いです。
一方で、副反応や有害な後遺症や死亡報告など無視できないだけの報告があると思います色々な一例報告などが医学的にもSNS的も上がっており、ワクチンの重要な側面ではあると考えます。
こういう所からワクチン派、反ワクチン派、と呼ばれる人達の噛み合わない戦いがあります。
例え話として、車の話をしてみたいと思います。
人力車の時代に、誰かが『あれがあったら皆幸せだ』『楽に移動できる』って思って自動車が誕生したと推測する。ただ、実際に自動車ができたら、意外と事故を起こして人が事故死したり、後遺症が出たり事故が起きたりしました。自動車も時代を経て、走行可能速度が速くなったり、環境配慮のEV車などの新技術が出たりしています。
さて何の話かというと、
ワクチン=自動車と置き換えると見方が考えやすくなります。
自動車は便利です。確実に我々の生活にはプラスになっています。とはいえ、自動車を皆が保有するかと言えば別です。自転車や徒歩を選ぶ人もいます。僕も自動車は持たずに、自転車を使っています。先ほど言った通り、時として車は事故を起こします。人が亡くなることや後遺症が生じる事もあります。この事故=副反応、としましょう。
ワクチン派と呼ばれるワクチン賛成群は、車って便利だよね、って話をしています。ただ、ガソリンって環境に悪い面もあるし、最近はEVって新たなプラス面や逆に電力消費過多で環境破壊とかって悪い面も言われている。確かに自転車の方が健康にいいかも、とかも思っていたりします。
反ワクチン派と呼ばれる方々は、車って便利だけど自転車より健康的じゃないし、事故で人が亡くなったりするから、よくない面も結構あるなぁ、と話している印象です。
でも、自動車は最高で何も問題ない機械とも思っていないし、事故が起きるんだから車なんて無くなってしまえ、とも思っていないと感じます。
ところが、ことワクチンとなるなんかズレています。ワクチン使う人も、ちゃんとワクチンのよくない面から目は背けていません。副反応だってみていますが、『やっぱり車が便利』が優勢なだけ。ワクチンを使わない人も本来なら、車を運転した人や車自体にトラブルがないか、轢いた側と轢かれた側の過失の有無、などを気にするべきで、『車が悪い、車なんて排除だ、皆自転車にしよう』とはならない気がします。
賛成派は便利だと言い、反対派は事故が起きることがあるから車なんかなくなれ、と言う。噛み合ってないですよね。自動車の利便性と自動車の廃止意向をぶつけ合っているのです。それは噛み合わないでしょう。微妙にズレているのだから。
悩んだら、その答えになるような質問を考えましょう。と言われますが、片や自動車には便利な点があるかを聞かれ、片や自動車は無くなった方がいいかを聞かれている状態。
政治家同士の議論も困難ばかりですが。
そして、車も時代と共に進化しました。結果速度はあがり、恐らく40-50km/hrでしか走れなかった時代とは異なり、技術が進み80km/hrで走れる車で事故を起こした方が、事故の程度は大きいはずです。mRNAワクチンという新技術が想定外の事故を起こした。40km/hrの時代では想像できなかった事故でした。でも、80km/hrで走れる車を味わった人がその車を手放して、40km/hrでしか走れない車を選んだり、自転車しか乗らなくなるでしょうか。
なんとなく、車に乗る人は事故という側面はあれど乗り続ける気がします。
事故は仕方ないとはいいません。事故の原因はちゃんと究明しないといけない。だから、こんな事故があった、という報告は次の事故を起こさない為にも、起きた時の対処のためにも、是非声を上げた方がいいと思います。
長くなりましたが、ワクチン派とか反ワクチン派とか、どうでも良くて。
僕は車は事故も起こすがやっぱり便利であった方がいい、でも維持費高いから個人的には持ってないです。ワクチンは極々最小限の価値はありそうで、最近はその価値も薄れてきている。とはいえ、事故があったから全面禁止ても思っていないです。
論文読解:SGLT-2阻害薬と下肢切断の関係
【きっかけ】
日々の診療で糖尿病での下肢切断は少なくないです。
外科系の先生からすると、切断だけでも大変なのに、糖尿管理やら感染症管理やら内科的な視点が必要になることも多いので悩まされることが多いと思います。
実際、僕が後期研修医であった10年ほど前は、世界では30秒に1本の足が切断されている、とさえ言われておりました。

今回の論文は、そんな糖尿病と切断の関連の中でも、SGLT-2阻害薬との関連についての論文です。
【今回の論文】
SGLT2 inhibitors and lower limb complications: an updated meta‐analysis
です。
PubMedのページはこちら👇
【背景】
・SGLT-2阻害薬は血糖管理のみならず、心血管や腎障害での有効性も示されている。
・一方で、CANVASプログラムでカナグリフロジンで加療を受けた人が切断率が2倍であったなどの報告もあり懸念点もクローズアップされた。
・いくつかのシステマティックレビューやメタアナリシスでSGLT-2阻害薬と切断リスクは無関係とされたが、末梢動脈疾患(PAD)や糖尿病足病変(DF)との関連は示されていない。
・PADやDFも最終的には切断リスクになりえるため、再評価目的にメタアナリシスを行った。
【方法】
・糖尿病患者を含むRCTで、切断/PAD/DFのイベントを含み、SGLT-2阻害薬の内服有無の比較がされているものを抽出。
・合計39件のRCTで、15件に切断、31件にPAD、19件にDFの情報が含まれていた。
【結果】
・切断、PAD、DFの分析における、SGLT-2阻害薬内服/非内服者の数は、それぞれ40925/33414人、36446/28685人、31907/25570人であった。
こちらが、論文に記載されている結果の表です。

SGLT-2阻害薬を内服している患者の切断、PADのリスクについて記載がされています。
切断はオッズ比1.08-1.40、PADはオッズ比1.03-1.42とわずかに優位差をもって上昇しています。
サブグループ解析もされています。


結論から言えば、
・カナグリフロジンで切断リスクがオッズ比 1.04-2.46、PADリスクがオッズ比1.14-2.05で優位に上昇
・SGLT-2阻害薬ではDFは増加しない
・SGLT-2阻害薬使用52週間以上(≒1年以上)で切断リスクはオッズ比1.08-1.43と上昇
・SGLT-2阻害薬内服中の収縮期血圧低下はPAD/DFのリスクを増加させ、体重減少も切断/PAD/DFのリスクを増加させる
【DIscussion】
・SGLT-2阻害薬の体重減少は浸透圧利尿とグルコース排泄によるため、循環血症量低下が虚血壊死を誘発する可能性が示唆される
・実際に、サイアザイドによる下肢切断リスクの報告もある
・同時に、循環血症量に栄養するような利尿作用のないGLP-1受容体作動薬では、SGLT-2阻害薬と同等の体重減少効果があれど、下肢切断リスク上昇の報告はない
・一方で、ヘマトクリット値やヘモグロビン値と切断リスクの関連は示唆されず、単純な循環血漿量の低下だけでも説明はつかない。
【結論】
今回のメタアナリスでは下記が示された
・カナグリフロジンにより切断/PADリスクが軽度上昇
・SGLT-2阻害薬使用中の体重減少と収縮期血圧低下が下肢合併症のリスクであり、下肢合併症予防のモニタリングとして重要
【気になったポイント】
・論文タイトルは『SGLT-2阻害薬』となっているが、結局切断リスクがあるのはカナグリフロジンだけ
→カナグリフロジン(カナグル®)の使用に注意をしていく必要がある
・SGLT-2阻害薬を1年以上の使用で切断リスクは上昇する
→SGLT-2阻害薬を開始して1年経過したら注意をし始める
・SGLT-2阻害薬を使用中に体重減少してきた場合に下肢合併症リスク
→そもそも、体重減少を視野に入れないでSGLT-2阻害薬を導入するようなシチュエーションがあるのだろうか?
心不全や蛋白尿のあるCKDに対する治療以外で減量を考えない投与はあり得るのか?
というのが疑問である
・また、収縮期血圧の低下や体重減少についての具体的な数値が明確には書かれていない
【まとめ】
最低限の理解とすると、
・カナグリフロジンでは切断リスク上昇
・SGLT-2阻害薬開始から1年経過したら体重減少や収縮期血圧の低下具合に注意をすることで切断をはじめ下肢合併症の予防への意識につながる
論文読解:コーヒー摂取と死亡率の関連
【きっかけ】
ふるさと納税でコーヒーのドリップパックを注文する程、普段からコーヒーを飲む習慣があります。
が、コーヒーも飲み過ぎて大丈夫なのか?、という疑問からコーヒー関連の健康情報文献を読んでみました。
今回の論文はコーヒー摂取と死亡率の関連について、です。
【今回の論文】
Associations between coffee consumption and all-cause andcause-specific mortality in a Japanese city: the Takayama study
です。
PubMedのページはこちら👇
【背景】
・過去の疫学研究から、コーヒーの摂取が全死亡や心血管疾患(CVD)による死亡と逆相関を示すことが報告されていた
・しかし、アジアの非白人集団ではエビデンスが乏しかった
【方法】
・1992年、高山市在住の35歳以上の住民31,552人にアンケートを実施し、29079人を16年間追跡した
・ベースラインでのコーヒー摂取頻度は「飲まない」「1日1杯未満」「1杯」「2~3杯」「4杯以上」の5群に分類さた
・主要評価項目は全死亡、およびがん・CVD・感染症・消化器疾患などの原因別死亡とした
【結果】
・追跡期間中(平均14.1年)に5339人が死亡した
・全死亡率は、コーヒー摂取量が多いほど低下傾向があった(最も多く飲む群では約19%のリスク低下)
・CVD死亡率も有意に低下(HR:1日1杯群 0.76、2–3杯群 0.67)
・がんによる死亡とは有意な関連はなし
・感染症と消化器疾患による死亡は、コーヒー摂取者で有意に低下した
・男性でより強い逆相関がみられ、女性では統計学的有意差はなし
こちらが、論文に記載されている結果の表です。

【考察】
コーヒーには抗酸化作用や抗炎症作用を持つ成分が含まれており、これが死亡リスク低下に関与していると考えられる
【結論】
日本の地域住民において、1日1杯以上のコーヒー摂取は全死亡およびCVD・感染症・消化器疾患による死亡リスクの低下と関連してた
【気になったポイント】
・何よりも日本人の16年間の前向きコホート研究である点がありがたいです
今回は自分自身の習慣に対する検討なので日本人の男性の情報はまさに欲しかった情報です
・著者がLimitationとして記載していましたが、
①コーヒーの種類の検討、②カフェインレスに関する記載がない、③大量摂取者が少ない、という3点は気になりました
・①豆から挽く、インスタント、缶コーヒー、では確かに違いそうです。また産地による違いもありそうな気がしてしまいます。③大量摂取者が少なく、過剰摂取による問題は評価できていません。
自分は1日0-2杯ですので、過剰摂取はないとは思いますが。
・また、男性でしか有意差が出なかったのも気になりました。これに関しては考察もされておらず、難しいポイントだと思いました。
性ホルモンの影響でもあるのでしょうか?
【まとめ】
論文の表は少し、見にくかったので省略を加えてまとめてみました。

女性では死亡率の低減にはコーヒーは寄与しなさそうです。
男性では1日3杯までなら、用量依存的に全死亡率とCVD死亡率が低下しています。
また、1日1杯のみ癌死亡率の低下も示されています。

男女分けられてはいませんが、その他の疾患死亡のまとめはこちらの表です。
消化器疾患の死亡は1杯以上で、感染症死亡は1杯以下のコーヒーで優位に減少を認めます。
細々したのを覚えるのが難しいならば、男性は1日1杯のコーヒーを飲めば、CVD死亡、消化器疾患死亡、感染症死亡が減らせると思われる、だけ覚えておきましょう。