総合内科医のよもやま話

総合内科専門医。ちょっと気になった事を調べて、まとめてみます。ちょっとした医学小ネタと思ってください。

論文読解:医者もゴリラを見落とす

まあまあ、パンチのきいたタイトルかもしれないですが。

 

【きっかけ】

診断エラーを考える際に、『見落とす』というものが少なからずありますが、視界に入っているはずなのに見えていない、ものがあります。

そういうものの中でも有名なものに、非注意性盲目という認知バイアスがあります。

これを示した有名な実験に、見えないゴリラ、というものがありますが、これまた字ずらだけで見たら意味が分かりません。

 

これを、医療者にやった論文が2013年にありますので読んでみました。

医者もゴリラを見落とすようです。

 

【今回の論文】

 “The invisible gorilla strikes again: Sustained inattentional blindness in expert observers”

です。

日本語に直訳すると、『見えないゴリラ再び襲来:専門家観察者における持続的な無関心盲点』です。

 

PubMedのページはこちら👇

アブストラクト:要旨】

熟練した専門家においても「持続的不注意による盲目(Sustained Inattentional Blindness)」が生じるかを検証した実験研究(横断研究)

・24人の放射線科医に肺癌のスクリーニングを目的とした肺のCT画像を確認させ、肺結節を探索するよう指示した。

・その際、最後の症例のCT画像の中に、小さなゴリラの画像を複数枚にわたり挿入した。その結果、放射線科医の83%が、この予期せぬゴリラの画像に気づかなかった。

・専門家であっても、特定のタスクに集中していると、予期せぬ異常を見逃す可能性が高いことを実証した研究である。

 

【PICO】

・P:24人のボストン在住の放射線科医(平均経験年数は12.9年)

・I:5症例の肺CTスクリーニング画像で肺結節を探すタスクを課す

  最後の症例のCT画像に連続する5枚のスライスにゴリラの画像を入れる

・C:明確なものはない

・O:Primary 予期せぬゴリラに気づいた放射線科医師の割合

    Secondary ゴリラを注視した時間、肺癌の正診率

 

【方法】

経験豊富な24人の放射線科医師により、肺癌スクリーニング画像(平均10.4個の肺結節)を5症例読影し、その中の最後の症例に5枚のスライスにわたってゴリラの画像が挿入され、異常に気付くかを判定した。

 

【結果】

・24人中20人(83%)がゴリラの存在に気付かなかった。

・ゴリラを見落とした20人中12人はゴリラが表示されていた領域の視線を向けていた。

・肺結節の検出精度はゴリラを見つけた群も、見つけられなかった群も優位差はなかった(平均正診率 56% vs 57%)。

 

【まとめ】

・本研究は、高度な訓練を受けた専門家でさえ、特定のタスクに集中している際には、たとえ視界の中心にあったとしても、予期せぬ物体を完全に見逃してしまう「非注意性盲目」に陥ることを明確に示した点で画期的である。

・この結果は、放射線科医の能力を疑問視するものでは全くなく、むしろ人間の認知システムの普遍的な特性を浮き彫りにしたものである。

 

【個人的な感想】

83%の放射線科医が見落とすなら、正直分かりにくいゴリラなのではないかと思い論文を見ると、結構わかりやすいゴリラでした。

どうでしょうか?

結構わかりやすいゴリラではないでしょうか?

別の画像ではこちら

 

これも、普通なら見落とさない気がします。

それでも、集中するべきタスクがあると、熟練した人でさえも見落とすわけです。

診断エラーが起きやすく、防ぐことの難しさを改めて感じさせられました。