【きっかけ】
日々の診療で糖尿病での下肢切断は少なくないです。
外科系の先生からすると、切断だけでも大変なのに、糖尿管理やら感染症管理やら内科的な視点が必要になることも多いので悩まされることが多いと思います。
実際、僕が後期研修医であった10年ほど前は、世界では30秒に1本の足が切断されている、とさえ言われておりました。

今回の論文は、そんな糖尿病と切断の関連の中でも、SGLT-2阻害薬との関連についての論文です。
【今回の論文】
SGLT2 inhibitors and lower limb complications: an updated meta‐analysis
です。
PubMedのページはこちら👇
【背景】
・SGLT-2阻害薬は血糖管理のみならず、心血管や腎障害での有効性も示されている。
・一方で、CANVASプログラムでカナグリフロジンで加療を受けた人が切断率が2倍であったなどの報告もあり懸念点もクローズアップされた。
・いくつかのシステマティックレビューやメタアナリシスでSGLT-2阻害薬と切断リスクは無関係とされたが、末梢動脈疾患(PAD)や糖尿病足病変(DF)との関連は示されていない。
・PADやDFも最終的には切断リスクになりえるため、再評価目的にメタアナリシスを行った。
【方法】
・糖尿病患者を含むRCTで、切断/PAD/DFのイベントを含み、SGLT-2阻害薬の内服有無の比較がされているものを抽出。
・合計39件のRCTで、15件に切断、31件にPAD、19件にDFの情報が含まれていた。
【結果】
・切断、PAD、DFの分析における、SGLT-2阻害薬内服/非内服者の数は、それぞれ40925/33414人、36446/28685人、31907/25570人であった。
こちらが、論文に記載されている結果の表です。

SGLT-2阻害薬を内服している患者の切断、PADのリスクについて記載がされています。
切断はオッズ比1.08-1.40、PADはオッズ比1.03-1.42とわずかに優位差をもって上昇しています。
サブグループ解析もされています。


結論から言えば、
・カナグリフロジンで切断リスクがオッズ比 1.04-2.46、PADリスクがオッズ比1.14-2.05で優位に上昇
・SGLT-2阻害薬ではDFは増加しない
・SGLT-2阻害薬使用52週間以上(≒1年以上)で切断リスクはオッズ比1.08-1.43と上昇
・SGLT-2阻害薬内服中の収縮期血圧低下はPAD/DFのリスクを増加させ、体重減少も切断/PAD/DFのリスクを増加させる
【DIscussion】
・SGLT-2阻害薬の体重減少は浸透圧利尿とグルコース排泄によるため、循環血症量低下が虚血壊死を誘発する可能性が示唆される
・実際に、サイアザイドによる下肢切断リスクの報告もある
・同時に、循環血症量に栄養するような利尿作用のないGLP-1受容体作動薬では、SGLT-2阻害薬と同等の体重減少効果があれど、下肢切断リスク上昇の報告はない
・一方で、ヘマトクリット値やヘモグロビン値と切断リスクの関連は示唆されず、単純な循環血漿量の低下だけでも説明はつかない。
【結論】
今回のメタアナリスでは下記が示された
・カナグリフロジンにより切断/PADリスクが軽度上昇
・SGLT-2阻害薬使用中の体重減少と収縮期血圧低下が下肢合併症のリスクであり、下肢合併症予防のモニタリングとして重要
【気になったポイント】
・論文タイトルは『SGLT-2阻害薬』となっているが、結局切断リスクがあるのはカナグリフロジンだけ
→カナグリフロジン(カナグル®)の使用に注意をしていく必要がある
・SGLT-2阻害薬を1年以上の使用で切断リスクは上昇する
→SGLT-2阻害薬を開始して1年経過したら注意をし始める
・SGLT-2阻害薬を使用中に体重減少してきた場合に下肢合併症リスク
→そもそも、体重減少を視野に入れないでSGLT-2阻害薬を導入するようなシチュエーションがあるのだろうか?
心不全や蛋白尿のあるCKDに対する治療以外で減量を考えない投与はあり得るのか?
というのが疑問である
・また、収縮期血圧の低下や体重減少についての具体的な数値が明確には書かれていない
【まとめ】
最低限の理解とすると、
・カナグリフロジンでは切断リスク上昇
・SGLT-2阻害薬開始から1年経過したら体重減少や収縮期血圧の低下具合に注意をすることで切断をはじめ下肢合併症の予防への意識につながる