医療関係者であればよく知っているとは思いますが、腎機能障害時には薬剤の投与量を調整する必要がある場合があります。
僕は全く覚えられないので、毎回表を見て投与量を決めています。
理屈としては、腎代謝(腎排泄)だから減らす、というのは何となく理解していましたがその投与量設計は全く理解していませんでした。
実際にはAUCを考えるので、100%この通りになるわけではないですが、本を読んで気になった部分を抜粋、スライドにしてみましたので参考にしてみてください。

尿中排泄量を念頭に入れた投与設計についてまとめました。

投与量を調整する必要があると思われる際には、
投与設計として、常用量に補正係数をかけて投与量を評価する必要があります。
その補正係数を薬剤の尿中排泄量を元に計算していくのが今回のテーマです。


ある薬剤Aを例にグラフから求めていきます。
①まずは、緑線のグラフを作るところからになりますが、単純です。
左軸の尿中排泄率に合わせて右上まで線を引くだけです。
②次に、GFRに合わせて対応する係数を読み取ります。
それだけです。
これで、尿中排泄率90%の薬剤では、GFR45だと係数が0.5になることが分かりました。
ちなみに、書籍ではこの薬剤の例として、プレガバリンが挙げられていました。
確かに、腎機能にあわせて減量しないと、眠気、ふらつき、食思不振などが出るイメージがあります。
稀に、意識レベル低下まで起こすことがあります。


次は、書籍にはないですが、薬剤Bという例も考えてみます。
薬剤Bは尿中排泄率50%なので、赤線のグラフになります。
次に、GFRが60なら係数は0.8、GFRが20なら係数は0.6と分かります。
尿中排泄率50%の薬剤はα-GIであるミグリトール(商品名セイブル)100mg錠が尿中排泄率51.6%で近いと思われます。
また、β遮断薬のプロプラノロールも尿中排泄率50%のようです。

しかし、毎回グラフを書くのも面倒ですので、一般式化した方が楽です。
結局、この係数の意味するところは、
投与した薬剤量のうち、どの程度がクリアランスされて排泄されるか、です。
よって、腎臓のクリアランス➕非腎臓のクリアランス、になります。
腎臓のクリアランスは、尿中排泄率に対して、腎機能分減量されるはずなので、
腎臓クリアランス🟰尿中排泄率✖️GFR/100
になります。
例えば、
薬剤AでGFR45なら、0.9✖️45/100🟰0.405
薬剤BでGFR20なら、0.5✖️20/100🟰0.1
となります。
次に、非腎臓クリアランスは、尿中排泄率意外の部分ですので、
非腎臓クリアランス🟰1➖尿中排泄率
になります。
例えば、
薬剤Aなら、1➖0.9🟰0.1
薬剤Bなら、 1➖0.5🟰0.5
となります。
よって、
補正係数🟰尿中排泄率✖️GFR/100➕(1➖尿中排泄率)
🟰1➕尿中排泄率(GFR/100➖1)
🟰1➖尿中排泄率(1➖GFR/100)
という式ができます。
なおこの形に変形するのは、基本的に1≧GFR/100だからです。
では、具体的な薬剤で見てみます。


抗菌薬は腎機能に応じて薬剤投与をよく調整します。
よく使うメロペネム(MEPM)を見てみます。
尿中排泄率は60-65%ですので、計算しやすく60%とします。
もし、GFR30の患者に投与するならば、
係数は、1➖0.6✖️(1-30/100)🟰0.58となります。
本来の常用量が1日3gなので、GFR30ならば1日量は3g✖️0.58🟰1.74gとなります。
サンフォードでは、1日2gの表記になっていますので、およそ正解と言えそうです。


これもよく使う、制吐薬のプリンペランも見てみます。
尿中排泄率は80%ですので、
もし、GFR35の患者に投与するならば、
係数は、1➖0.8✖️(1-35/100)🟰0.48となります。
参考文献の書籍の付録についている調整量を見ると、半量への減量になっています。
これもほぼ正解です。
なお、先程薬剤Bとしたミグリトール、プロプラノロールは、こちらです。


グラフで見せた通り、GFRが20でも係数が0.6程度で済むため、常用量に対しての明確な減量指示はありません。
とは言え、開始量を減らしたり、慎重投与ではあるようです。

では、減量の仕方として、1回投与量を減らすのか、投与回数を減らすのか、2パターンが考えらます。
これは、時間依存性薬剤か、濃度依存性薬剤か、という点がポイントになるようですが、実際にはAUCなどからよりよくなるように設計できた方に合わせているようです。
なので、推定できるのは1日投与量の調整ぐらいと考えてよさそうです。
また、注意点として、
①GFR 🟰 CCrとしてよいのか
体格次第でバラツキがでるGFRを採用しつてよいのか
Cys-Cなどの方が無難ではないか?
②併用薬にもよる
代謝酵素の誘導などをすると、相互作用により血中濃度が増減するため、理論通りにもいかない可能性がある
③プロドラッグや代謝変化体も薬理学的な作用を持つ薬剤などは、尿中排泄率だけでは安易に考えられない
など、気になる点も多くあります。
とは言え、こういう考え方を学べたのはいい勉強でした。
【参考文献】
・腎機能に応じた投与戦略 医学書院
・HOKUTO/サンフォード

